過去2回にわたりシルクのお話をしてきましたが、今回は3回目。前回シルクは世界的には衰退か横ばいの生産量となっているとお伝えしました。
しかし、今シルクが未来の材料として再注目され始めています。

そして私はラオスまできて繭を作っている。

なぜなんでしょう?理由をいくつか見ていきたいと思います。

※なお本記事は、極力主観を入れずにTEDFiorenzoさんが発表した内容と、農林水産省委託プロジェクト研究【医薬品作物、医療用素材の開発】で発表されている資料、シルク学会で発表された内容をもとにシルクの未来の材料としての可能性を記載しています。

(↑TEDので紹介されたシルクの未来の話。)

理由①持続可能な材料であること

まず第一に繭そのものが持続可能な素材であることがあげられます。
(まぁ物事には永遠なんてないから、持続可能って言葉もあれですが、便利なので使わせていただきます。)

お蚕さんの飼育に必要なのは、極論をいうと桑だけ。
そしてその桑は自然栽培で育ちます。
また生態系への影響ですが、養蚕は室内で完結できるので生態系への影響を与えいくい生き物でもあります。

まぁしかし、今までの養蚕は道具の消毒などにホルマリンを使ってたり、農場に化学肥料を使ったりとしているのも事実。またほとんどが人工飼料で幼少期を育てるのですがこの人工飼料には防腐剤も欠かせません。養蚕従事者の健康を守ることもふくめ持続性を上げるためにはこの辺りを解決していく必要があると個人的には思っています。

ちなみにラオスの農場では、人工飼料は使わず桑は自然栽培。農場で作られるものだけで育てていますし、ホルマリンなどの劇薬の使用はしていません(蚕に致命的な病原菌は60度以上を数時間保つと死滅するので道具は太陽光から高温を得て除菌しています)。それで綺麗な繭ができあがってきています。種も自家採種で農場内のモノだけで完結する本当に持続性の高い養蚕に取り組んでいます。

理由② 生体適合性の高いタンパク質ができること


繭はセリシンとフェブロインという2種類のたんぱく質でできています。実はお蚕さんは非常に優秀なタンパク製造機ともいわれるくらい効率よくタンパク質(セリシン・フェブロイン)をつくります。
そのタンパク質が生体適合性が高いタンパク質なんです。

そもそも絹糸は縫合糸として長らく外科治療に用いられてきた実績から、発がん性などの未知の危険性が少ないことはわかっていました。それをさらに証明するため、「医療機器の生物学的安全性評価の基本的考え方(薬食機発0301第20号)」に準拠した試験がフィブロインタンパク質材料に対して実施され、本材料が安全性の高い材料であることが確認されました(2015年玉田教授ら)

また、繭から直接採取した絹繊維で作製された人工血管を動物体内に長期埋植すると、1 年後には生分解により絹糸の 70%程度がコラーゲンと置き換わることが報告されているんです(Enomoto et al. 2010)。

少し難しい言い方になってしまいましたね。
まぁ平たく言うと、シルクタンパク質は人の細胞が拒絶反応を示さないタンパク質といえるでしょう。しかもそれが本当に人の細胞に置き換わってしまうんです。
(人工骨がいつの間にか本当の骨になってしまい成長に合わせて大きくなってくれるイメージです)

理由③ 食べて体内の改善も知られ始めた

実はこれまで栄養学的研究の広がりは少なくデータは不足していたシルクですが2010の取り組みで田所教授によりその有効性が示されました。
その結果はフェブロイン(シルクタンパク質)が大豆たんぱく質、牛乳タンパク質群に比べ、血清コレステロール値と中性脂肪では有意に上昇が抑制されたというもの。

※食べるシルクパウダーというと加水分解されたものを多く見かけるが、これはアミノ酸まで分解したものとなり、シルクの性質はしめさない。本実験においてもアミノ酸化合物で摂取するよりもタンパク質で摂取する方が効果が大きいことがあきらかになっている。本記事はあくまでもシルクタンパク質について記載しています。もしシルクパウダーを見かけても、加水分解シルクはアミノ酸のことですので表示をよく見る事をおすすめします。

このように、シルクタンパク質は脂質が危険因子に挙げられる生活習慣病に対して、有効な機能性を発揮すると考えられ、これら以外でも抗酸化作用、アレルギー抑制効果、血圧低下作用さらにはヒト線維芽細胞の増殖促進などの機能性が示唆されています。

理由④ 野山にすてれば分解される記憶媒体

シルクタンパク質はナノレベルでその形態を操ることが可能となっています。そのため記憶媒体としても利用が可能なんです。
TEDではシルクフィルムにホログラムを投影していますね。
野山に捨てても自然と分解される石油に頼らないフィルムです。
コップも作っていますが、さすがにこれはもったいない(笑)でもなんにでも形作ることができるのがわかります。

これの凄いところが情報をインプットできるので、薬のデリバリーなんかも可能になるということ。体内の幹部ピンポイントに必要な薬が届けれるようになるかもしれません。しかも先にも述べたように生体安全性が高いから安心です。

理由5 高蛋白源としての利用

これは少し1~4の理由とはなれますが、シルクではなくその蛹の利用。
この蛹が高蛋白源なのです。
昆虫食が見直されている今、未来の食の選択の一つに蚕蛹が選べるようになっているかもしれません。

(個人的には蚕カレー結構いけてます。)

と、全体的に論文ベースをかみ砕いて記載したので難しい表現になってしまったかもしれません。
シルク生地としても勿論、消臭や抗菌、抗紫外線などの特性を示す発表はありますが、今回は生地から離れたリバースエンジニア(シルクからタンパク質へ戻された素材)の世界を少しのぞいてみました。

なお、ラオスで作られた繭はこのようなリバースエンジニアによって肌を本来もっている力に戻すをテーマにしたケア製品にしております。繭もリバース、お肌もリバースです。もちろん口にいれて大丈夫なものだけでつくっています。

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