雷は稲の妻?ラオスで自然栽培の桑が豊かなわけ

今日は自分の覚えも兼ねて、窒素固定のことを整理してみました。
なぜラオスでは間作もしないで、有機肥料も化学肥料もあげないのに豊かに桑が育つのか?そんなことを考えるのに重要な窒素についての考察です。

なんで窒素が必要なの?

農業をやっていると必ず巡り合う「窒素固定」という言葉。
空気中にいくらでもあると思っているあの窒素が、私たち人間・・・というよりほとんどすべての生命が必要としていて、遺伝子DNAにもタンパク質にもアミノ酸にも使われているって知っていましたか?

そしてその窒素は絶えず外から取り入れる必要があるんです。
もちろん植物にも大量に必要となってきて、特に農業の場合、植物が多く窒素を使うものだから、放っておけば土中の窒素が不足するんです

窒素と聞くと、大気中のほとんどを窒素が占めているってことくらいは覚えているかもしれません。
78%が窒素、21%が酸素 あとはその他の成分でできているんですから。

だったら使いたい放題じゃん!

と思うかもしれません。
しかし、大気中の窒素はとっても安定していて簡単には使わせてくれないんです。三重結合と言ってN(窒素原子)とNが手を三つでくっついてるもんだから、簡単にNが使えない状態。N三N

これを分解して植物が使える(そして私たちが使える)ようにしてくれるのが窒素固定。窒素の結合を外してアンモニアとか違う物質に変えて、使えるようにしてくれるんです。その方法はいくつかあるのですが・・・

窒素固定の代表はやっぱりマメ科

そんな窒素固定をしてくれる代表がマメ科。正確にはマメ科の根っこにつく根粒菌。昔から使われてきた窒素固定の方法で、マメ科の根っこは、窒素を作る菌(=根粒菌)と相性が良く共生を行ってるんです。
特に大豆が日本ではその代表格ですよね。

画像1

この写真はマメ科じゃないんですが、根っこにぽこぽこと丸いのがありますよね。これが根粒。マメ科のはもっとポコポコとあります。

根粒菌は、ニトロゲナーゼ酵素という窒素分子を還元する酵素を持っていて、窒素を分解してくれるのです。ただこのニトロゲナーゼは酸素が苦手なので、マメ科はヘモグロビンに似たタンパク質を根粒菌の近くに持つことで、低酸素にて活動をサポートしていたりします。大豆と根粒菌は最も有名な共生関係の一つ。

ところが、ラオスの農園では特にそのような間作をしなくても植物がよく育ちます。

雷でも窒素固定

画像2

ラオスでの窒素固定の代表的なのの一つが「雷」
なんとあの怖い雷が植物を豊かにしているんです。

漢字を見てもらいましょう。雷は別名稲妻と書きますよね。
そう稲の妻なんです。
雷が落ちた土地では稲(畑)がよく育つ」と古来から日本でも言われてきました。それくらい豊かな稲を作るのに必要な妻役を雷が担っているなんて驚きですよね。

そんな雷。奥ゆかしい日本ではそうそう見かけることがありません。ところが、ラオスの雷は積極的で雨季は毎日のように雷が鳴ります

恐妻なのか怖いくらい近くに落ちます。家が揺れるくらいすごいパワーで落ちます。
ピーマイからここ数日も毎日夕方ごろ雷。雨が降らなくても雷だけなってたりします。(雷の写真はなかなか撮れないので、拝借したものですが、これくらいはしょっちゅうです)

で、この超高いエネルギーで安定した窒素を分解し、酸素と反応させることで使いやすいようにしてくれているんです。
これは植物の窒素固定とは少し違い、硝酸態窒素

N2 + O2 = 2NO

(植物の場合はアンモニアなど)

これが雨と共に土に戻り植物に吸い上げられるというイメージでしょうか。
しかし、どうも雷だけではなさそうです

シロアリからも窒素固定!?

お家の天敵シロアリくん。
ラオスでは家ではなく土の中に暮らすシロアリ(体も茶色いし、家に住まないので台湾シロアリ系と思う)が多数存在します。

画像3

今日朝散歩してたら、まさかシロアリが普通のありのように土に行列を作って巣を作ってました(朝散歩で携帯持ってなく撮影できず残念。後で行ったらもういなかった)。そして落ちた枝の皮を見事食べ尽くしてました。写真はその歩いていた痕跡。少し土に道が見えるのがわかるでしょうか?

そんなシロアリの共生微生物(腸内細菌)にはセルロースを分解する能力があるのですが、なんと、窒素を固定し、栄養価の高いアミノ酸などに変換する機能もあるそうなのです。

まさか一生の外敵と思われたシロアリくんにもそんな側面があったんですね!

ただ、このシロアリは弱い根っこも食べてしまうので、植え付け時に根っこが成長するまではシロアリとの戦いと言えます。成長を勝ち取った桑の根は食べられません。(とはいえラオスでは桑は8〜9割くらい根をつけます。日本では5割で十分というところ)

石や砂からも!?

画像4

酸化チタンを含む石や岩、砂は太陽光の力を借りて窒素をアンモニアとして固定すると言われています。
これはまだ全然わかりませんが、ラオスの岩でも同じようなことが行われてるんじゃないかな?と思っています。
実はラオスの農場の石は火山岩がほとんど。以前ガイガカウンターでみてみると時々反応しているのでラドンなどが含まれていて、微量な放射線物質が出ているかもしれません。

これが触媒となって、
1,直接窒素固定をしている
2,土壌微生物を活発にさせている

と二つのことが考えられます。
また多孔質なため微生物の住処には良さそうなんです。

石が持つ力はとっても不思議で遠赤外線を出していたり、今後も石には注目していきたいと思っています。
が、あくまでラオスの石については想像です。

バナナやパイナップルの仮茎にも根粒菌!

そして、1999年のO.B. Weberらの論文によるとバナナにも根粒菌があるそうなんです。

この論文は窒素固定細菌とバナナやパイナップルとの関連を示しています。異なる遺伝子型の根、茎、葉および果実からのサンプルは、半特異的半固体培地で評価した場合、窒素固定菌の発生を示した。
(中略)
Azospirillum amazonense、Azospirillumlipoferum、Burkholderiasp。のグループに関連する細菌。また、Herbaspirillum属に類似したグループが、両方の作物のサンプルで検出されました。しかし、Azospirillum brasilenseとHerbaspirillum様細菌の別の2つのグループは、バナナ植物でのみ検出されました。

ウォンさんが「桑の間にバナナも植えるといいよ」と言っていたのはまさかこの論文を読んでたわけではない。
古くからの知恵というのは本当に理にかなっているんだと改めて思います。

そんなわけで、今年は桑の周囲だけでなく、間にもバナナを植える予定をしています。パイナップルもいいそうなんでパイナップルも植えちゃおうかな〜

他にもいろいろな要因が

これはあくまで今わかっている範囲での窒素固定の話。
シロアリの腸内からも窒素固定が出てくるくらいですから、この目に見えない数多いる微生物の中からは、窒素だけでなく思いもよらない効果を示すことがあるんだと思います。

そして以前も書いた通り、窒素を窒素だけで追っていると大切なものを見落としてしまいます。全体のバランスを通じてとにかくラオスの植物はパワーいっぱいということなんです。

と、今日は少し専門的なお話でした。
中学校で習ったNという文字が、体を構成する重要な役割を担っていたなんて、あの頃は思いもよりませんでした。

上部へスクロール