さて、改めまして、私たちは、わざわざラオスという国に行って、農場を作り、現地に会社を作り養蚕を自分たちで行っています。
養蚕をやって何をしているか?というと、ラオスで原料である繭をつくり、日本でケア製品を作っています。
はい。わかります。
皆様の頭に、大きな
???
がいっぱいでていることでしょう。
自分にとっては当たり前のストーリーで行き着いたのだと思っていたのですが、考えてみると確かにそれはそうですよね。
なんで、シルクでケア製品なの?
なんでラオスなの?
なんで、繭からつくるの?
なんでそんなめんどくさいことやるの
などなどまぁ冷静に考えたら意味不明なんです。そんなわけで今日から数回にわたり、なんでラオスなのか?なんで絹なのか?なんでケアなのか?
改めてじっくりと書かせていただきたいと思います。
それには大前提からお話ししなければいけませんね。
1.町の呉服屋からの転身(序章)
inSuiの母体は、愛知県の安城市という小さな町の呉服屋を100年以上つづけてきた会社。
呉服といえば麻や綿もあるとはいえ、やっぱり代表は絹ですよね
だから、シルクに関してはプロなのです。
・・・か?
本当に?
実は「呉服屋といえどもシルクのことすべて知ってるわけではない」
と実感したのが15年ほど前。
国宝級の繭は生の繭
ある日私たちは本当に着心地のいいシルクと出会います。それは国宝の修復などもされている織元さんを訪ねた時のこと。
そこで作られるきれいな織りものに目を奪われていると、彼はこう言います。
「国宝の修復をしていると、昔のシルクと今のシルクが全然違うってわかってきたのです。」
「その理由の一番大きな部分が生繭か乾繭かなんですよね」
そうなんです。繭には乾繭と生繭があるんです。
じゃ、乾繭と生繭で何が違うか?って?
乾繭は繭を熱風で乾燥させたもの。
卵の白身に熱を通すと、固まってもとにもどりませんよね?
これはタンパクが変性することによるものなのですが、シルクもほとんどがタンパク質なんです。(いきなり化学がでてきてすみません💦)
なので熱を加えた乾繭はタンパクに変性がおこり、シルク本来の性質を示しにくくなるんです。だから、絹の良さっていうとやっぱり生繭から引いた糸のほうが良い。
ところが、市場のほぼ100%が乾繭なんですよ。
だから、生繭なんて生産効率の悪いシルクはほとんど私たちの目に触れることはない。シルクシルクってやってても、生繭なんて出会わないですから、その違いは感じようがないわけなんですね。
で、この時この織元さんの生地にであい、初めて生繭と乾繭の違いを実感することができたってわけなんです。そして深く感銘をうけました。
乾繭と生繭
繭はお蚕さんが糸をはいて蚕蛾になるまえの蛹のおうち。
だから、放っておいたら繭を突き破って蚕蛾がでてきてしまうんです。かつて60%を占める日本の一大輸出業としてシルクが産業となるには、生の繭は扱いにくい。そこで、蛹ごと熱風乾燥させて中で蛹を死滅させる手法がとられ、今も普通のシルクの作り方になっています。
産業となる前は、熱風乾燥させずに糸を引いていたのですが、この繭を生繭と呼びます。
「桑も自分で育てること」
彼がもう一つこだわっていた点。それは桑と品種
だから自分たちで桑を育てるところから始めたのだそう。
絹織物だけを見ていると忘れてしまいますが、お蚕さんも生き物。
繭はその生き物からだされるもの。
だから、食べ物が影響されるのは当然のこと。
絹を扱っていながら、そんな当たり前すら忘れてしまっていたのだとこのとき反省したのを覚えています
・・・ただ、このときはまだ、正直「めっちゃこだわるんやなぁ」くらいしか思ってなかったのですが、これがのちにバチっと腑に落ちることになって、ラオスへ行く意味ともつながるのですが、、、、まだまだラオスは遠いですね。
もう少しお付き合いくださいね。
2.タイの生シルクで着物づくり
生繭の良さを知った私たちは、そこからタイへ行き始めます。
いや、正確にはタイやインドネシアなど東南アジアで生地を仕入れてオリジナルの着物は作っていたのですが、生繭の良さをしってしまった以上、原料がどのように作られているかを知る必要があると思ったのです。
そこから長い旅が始まります。
バンコクの滞在はわずか1日でイサーンと呼ばれるタイの東北部へ行き始めました。といっても、もちろん簡単に生産者は見つかりません。
どうやらイサーン地方というところに絹の産地があるらしいと聞いただけで、手あたり次第の無茶苦茶なローリング作戦。
イサーンへ行くだけで6時間とかかかるのに、ちょっと次の生産者のところへ行くだけで1日4~5時間移動とか当たり前なローリング旅。
この旅だけでもいくつかの記事になると思うくらい、多くの経験を経て、なんとかいい生産者に巡り合うわけです。(いつかこのころの旅の様子も書こうかな?)
幸いタイは前国王が田舎の生産物に力をいれてくれていただけあって、私たちが行き始めたころはまだまだシルクの生産が盛んでした。(今はどうなったかわかりません)
だから10軒以上の養蚕農家さんや、イサーンの養蚕を支える国の機関などにもお邪魔していろいろと見せていただくことができました。
そこでやはり「ひとえにタイシルクといっても、いろいろある。」ということを実感。
やはり多くは乾繭で作られているけれど、養蚕の農場ではまだまだ生の繭で手で引いている作り手たちもいるということもわかってきました。
そこでは養蚕農家さんが、そのまま糸繰もして、織まで一貫してやっています。そして、やはり、その違いは歴然。
生繭の手引きのシルクの着心地、軽さ、美しさ、光沢、触感どれも乾繭とは違うものでした。
3.自分たちでも養蚕を始めよう
それからしばらくタイで出会った素敵な養蚕農家さんと着物や帯を作るのですが、自分たちでも養蚕をしてみようというとこのころから思い始めます。
その最初の理由は2つ
「経糸がタイの生引きだけでは弱いから」
「日本の絹のほとんどは中国などからの輸入でその原価も年々高騰していっている」
この「自分たちで養蚕」をと思い始めたのが織物からケアへ移行した最初のきっかけとなります。
そして、養蚕のことを学びに日本全国の養蚕農家さんや、大学、研究者を訪ね歩くのですが、今回はひとまずここまで。
何とかタイへは行ったのですが、まだラオス出てきませんね。ラオスどころかまだまだ織物を模索してる最中。今後数回にわたっての記載となってしまいますが、お楽しみいただけたら嬉しいです。
それではまた。